あたしの心は虚ろに巣食う

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あたしの心は虚ろに巣食う

 あたしの心は空っぽだ。  胸の内から唐突になくなったのではないのだから、きっと最初から持ち合わせていないのだろう。  ヒトの気持ちも、あたし自身の本当の気持ちすらも分からないけれど、『無垢(むく)』には決して(もど)れない、傷まみれの空虚(くうきょ)受け皿(・・・)だけが、あたしの(むね)最奥(さいおう)には、いつも()る。 ──それ故。ヒトは、無遠慮に、まるで(ささ)(もの)でも(きょう)すかの(ごと)く、あたしの胸に思いを(そそ)ぐ。  (ひず)み、(ほころ)び、(よど)み、(きし)み、(イタ)み。  『心』を持っていても、『感情』を記憶できないあたしには、注がれる思いのなかからヒトの心を()み取れない。  『心』が(なば)(ひそ)む漢字からも(わか)るでしょう?  注がれるのは────。 ──(かな)しみによる歪みかもしれない。 ──(うれ)いによる綻びかもしれない。 ──(にく)しみによる淀みかもしれない。 ──(いきどお)りによる軋みかもしれない。  あらゆる可能性を思わせるけれど、本当の心は、相も変わらず届かないままだ。 ────ここでようやく、あたしはあたしの心がガランドウだということに気付く。  …………唯一残った『痛み(ココロモドキ)』だけが、あたしの胸の内を問うこともなく、受け皿にのみ無闇やたらと遠慮なく(ひび)を入れることができる。  血も涙も、心すらも無い『痛み(まがいモノ)』。──注がれる思いの中で、そんなモノにしか心を揺らめかすことができない存在なのだと、あたしはあたし(・・・)を見限る。 ──……あたしはまた、心の広いふり(・・)をする。  本当は、心が広いわけではない。  ……ただ、たった一言(ひとこと)本心(想い)(はな)つだけで、受け皿(もろ)とも、粉々(こなごな)(くだ)()ってしまうから──。受け入れることしか(・・・・・・・・・)、できなくなっている。 ──それだけの話。 ────あたしの(むね)に、『(ココロ)(なえ)』が()えられる、いつとも知れないその日(・・・)まで────。 ────『心のカタチ(・・・・・)』に気付(きづ)かれないよう────。  あたしは────…………っ。 ────ただひたすらに、彼が(つむ)いだ『夢幻(むげん)(虚構)』を(まも)()くのみ──。
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