カナリアの涙(かなりやのなみだ)-猫の瞳に映る不思議な恋物語ー

4/10
前へ
/10ページ
次へ
カナリアの涙-4p -猫の瞳に映る不思議な恋物語ー6235b2ba-f675-4e2e-9a44-760d7419a742 制作:kaze to kumo club 仕事で疲れ切った俺は、コンビニで夕食を買い込み、 トボトボと…北風の吹くマンションのエレベーターに乗った。 6階の603号室。 それが今はなき妻との思い出の地だった。 まだ、俺は忘れられなかった。 カナリアの笑顔を……。 あの部屋にいれば、いつか彼女が帰ってくる、そんな気がして、 引っ越すこともできなかったのだ。 笑うやつは笑え! 俺はまだ彼女をあきらめちゃいないんだ。 この身が滅び、天に召されたなら、必ず彼女に言ってやるんだ! ホラー好きなら、なんで幽霊になってでも、俺に会いにこなかったんだ……と。 ずっと待っているのに、君に一目会いたくて……ずっと、ずっと……。 さあー、呪ってもいい…。 俺の前に現れてくれ…、カナリヤ…。 頼むから……。 ウイーンと…微かにエレベイターは登っていく。 俺の情けない亡骸を乗せて……。 ドワノブに手がかかった時、その声がした。 『ミャ~オオ~ン』 見ると足もとに小さな子猫がいる。 わずか10センチほどの黒っぽい猫だ。 ふるえたその身は、見るからに惨めだった。 「なんだよ…、お前…? 迷ったのか…?」 だが、ここは6階。 近所の飼い猫か…? ブルブルと冷たく厳しい風に…子猫はちじんだ。 「お前な! うちは猫なんて飼えないんだ……」 言いかけて、俺は苦笑していた。 ”まるで同じだ…、カナリアにい言ってるようじゃないか…?” 猫が見上げている。 その底なしの瞳に…俺は吸い込まれていった。 あたりを2~3度見回してから、俺はその猫を抱え、 ドワをしめた。 猫と俺の目がまた不意に合った。 青く澄んだ瞳の奥に、少し黄色の輝きが見えた。 それは……、突然、宇宙の神秘を思もわす光だった。 「ミア~ン」 猫は手から逃れようと…もがいている。 「よ~し、お前の名は…『カナリア』だぞ! いいな!」 子猫は知ってか知らずか、微かに……泣いたように身をよじった。              -4p-
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加