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カナリアの涙-4p -猫の瞳に映る不思議な恋物語ー 制作:kaze to kumo club
仕事で疲れ切った俺は、コンビニで夕食を買い込み、
トボトボと…北風の吹くマンションのエレベーターに乗った。
6階の603号室。
それが今はなき妻との思い出の地だった。
まだ、俺は忘れられなかった。
カナリアの笑顔を……。
あの部屋にいれば、いつか彼女が帰ってくる、そんな気がして、
引っ越すこともできなかったのだ。
笑うやつは笑え!
俺はまだ彼女をあきらめちゃいないんだ。
この身が滅び、天に召されたなら、必ず彼女に言ってやるんだ!
ホラー好きなら、なんで幽霊になってでも、俺に会いにこなかったんだ……と。
ずっと待っているのに、君に一目会いたくて……ずっと、ずっと……。
さあー、呪ってもいい…。
俺の前に現れてくれ…、カナリヤ…。
頼むから……。
ウイーンと…微かにエレベイターは登っていく。
俺の情けない亡骸を乗せて……。
ドワノブに手がかかった時、その声がした。
『ミャ~オオ~ン』
見ると足もとに小さな子猫がいる。
わずか10センチほどの黒っぽい猫だ。
ふるえたその身は、見るからに惨めだった。
「なんだよ…、お前…? 迷ったのか…?」
だが、ここは6階。
近所の飼い猫か…?
ブルブルと冷たく厳しい風に…子猫はちじんだ。
「お前な! うちは猫なんて飼えないんだ……」
言いかけて、俺は苦笑していた。
”まるで同じだ…、カナリアにい言ってるようじゃないか…?”
猫が見上げている。
その底なしの瞳に…俺は吸い込まれていった。
あたりを2~3度見回してから、俺はその猫を抱え、
ドワをしめた。
猫と俺の目がまた不意に合った。
青く澄んだ瞳の奥に、少し黄色の輝きが見えた。
それは……、突然、宇宙の神秘を思もわす光だった。
「ミア~ン」
猫は手から逃れようと…もがいている。
「よ~し、お前の名は…『カナリア』だぞ! いいな!」
子猫は知ってか知らずか、微かに……泣いたように身をよじった。
-4p-
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