カナリアの涙(かなりやのなみだ)-猫の瞳に映る不思議な恋物語ー

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カナリアの涙-1p -猫の瞳に映る不思議な恋物語ーa4590080-182a-4a89-89c6-2cb64eb14dec                       制作:kaze to kumo club 「こんなの……おもしろくないよ!」  カナリヤは言った。 「なんでさ……? けっこうおもろかったぜ、俺は……?」  映画が終わり、字幕のタラップが流れていた。 ビデオは時期に止まるだろう。  でも、俺はカナリヤの意見に不満だった。 めずらしくムキになって、言い返してみた。 「これはアカデミー賞取った名作なんだぜ、感動すんじゃん……」 「どこがよ!だいたい潔癖性の恋愛小説家なんているわけないわよ」 「だから…、ドラマなんだよ、これは……」 「そうかしら?ドラマなら、どうしてエビにこだわるのよ! あのオジンは……変よ! 私なら、それだけで”ブーブー”だわ! バカみたい!」  我が愛しき妻であるカナリヤは、取り付く暇も与えずに……台所へと去っていった。  俺は不思議だった。 この『恋愛小説家』は誰もがステキだと言うラブコメディだ。 今度こそカナリアのやつを泣かせてやれると思ったのに……。 ガッカリだよ……まったく……。  俺達が結婚して2年あまりの間、 さんざんラブストーリーを見て来たが……今だ一度として……カナリアが驚嘆した恋愛映画はない。 それどころか……小説やマンガ、文芸作品、芝居にいたるまで、カナリアの眼から涙がこぼれた試しはないのだ。 『冷たい女』……。  職場の大号でも、有名だった。  手芸専門店として……各地にチェーン店を持つ……我が社は歴史の深い老舗だった。その本店に、何とか、もぐりこめた俺が……彼女とはじめて出会ったのは、なんと……社長室で!? しかも、最悪な出会いだった。 「どちら様ですか?あなた!」 「は、はい、本日、福岡支店から転任して参りました、営業3課の雲山です」 「ああ~、イノシシ営業のバカって……あんたの事……?」  俺はムッとした。  俺の業績を妬むやつらがそうー呼んでいるのは知っていたが、20才そこそこのガキにいわれたかない。  だが、その時はグッと堪えたのを今でもよく覚えている。 結果、それは正解だった。  のちに……彼女の正体がすぐにわかったからだ。 キャリアウーマンを地で行く……バリバリのやり手だったのだ。 「あんときは……こわかったよな~、あいつ……」  台所に立つカナリヤの後ろ姿は、とてもスラリとした若女房で、そんなそぶりは……微塵も感じられいない。  いい女だ……。 俺の顔はいつのまにか、にやけていた。  当時、秘書をしていた彼女は美しいながらも、とても怖い存在だった。その上……彼女は社長の1人娘で、秘書課のお局様……と呼ばれていたのだ。  つまり、とても、この俺がつきあえるような相手ではなかったわけ。  だが、運命とは不思議なものだ。 俺達を結びつけたものは……映画だった。 それも……、ホラー映画!?  リバイバルの『エクソシスト』特別編だったから……笑える。 偶然、休みの日曜にバッタリと映画館の前で会うなんて…。世も末だ……。 「なにしてんの、あんた……? イノシシ狩り……?」  俺を見るなり、カナリアは笑いながら言った。 俺の格好がまるで……狩りにでかけるマタギのようだったかららしい……?!  しかし、俺にとっては……大きめのダウンジャケットに黒めの革ジャン。 別に……マタギなんかじゃない。  彼女はおかまいなしに大声で笑った。 くやしい話しだが……その時、俺はかわいいと思ってしまったのだ。 なぜか……? -1p-
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