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第三十五部の壱 再会、雨女と晴れ男
ここは、錦町に接する妖との境界。
ヒトとも接する歓楽街の界隈に、ほんの少し接しているのだが。ヒトから入るには、ある程度の資質を持つ者でしか訪れるのは叶わず。
たとえばそう、妖が好む霊力があるとすれば。
元地獄の補佐官だった猫と人のような姿をしている店主の営む小料理屋、『楽庵』に辿りつけれるかもしれない。
桜も終わりを迎え、初夏に突入した。
錦の界隈で小料理屋を営む、猫人の火坑は店の玄関掃除をしている時に思った。
また名古屋の焼けるような暑さが来る時期に近づいている。
どんな食材を、どんな料理を作ろうか楽しみが増えてきた。特に、恋人の美兎にどんな料理を作ってあげようか、と思うと楽しみが自然と増えてしまうのだ。
「ふふ。自分で言うのもなんですが、僕も変わりましたね?」
猫人の生を得て、わずかに二百年程度。
そのうちの、ほんの砂粒程度の年月なのに。
愛しい愛しい、人間とは言っても女性と心を交わして、恋仲になれた。
婚姻を結ぶのは、彼女の人生を考えてしばらく先ではいるが。
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