第三十五部の壱 再会、雨女と晴れ男

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 いつか、とは思っている。  そのいつか、が五年十年先だとしても。妖の生き方を思えば、本当に砂粒程度の時間だ。美兎も受け入れてくれるかは、わからないが。あの短い期間、悩んでくれたのだ。いい方向であって欲しい。 「精が出ていますね? 大将さん?」 「……おや」  掃き掃除に夢中になっていると、客足の音に気づかなかった。  顔を上げれば、目の前にいたのは雨女の灯里(あかり)。その後ろには、息子である晴れ男の灯矢(とうや)が恥ずかしそうに、モジモジしていた。  空が晴れなのは、灯矢がいるせいだろう。まだまだ幼いのに、妖力が確実に育んでいるのかもしれない。 「……こ、こんにちは」 「はい、こんにちは。お久しぶりですね?」 「ええ、去年以来。色々立て込んでたもので」  それと、と灯里は灯矢の頭を撫でてやった。 「お、おかあさん……」 「灯矢? お母さんは連れてきたのだから、大将さんにきちんと伝えなくては」 「……僕に御用が?」  なんだろう、と。掃除道具を店に立てかけて、灯矢の前に屈んでみた。
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