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あの時は、感情の起伏がそこまでなかったが。今は年相応に恥ずかしがったりと、表情を変えていた。
にっこりと笑ってやれば、灯矢は恥ずかしがりながらも笑顔になってくれた。
「あ、あの……お兄さん、の」
「はい」
「ご飯……また…………食べたく、て。連れて来てもらいました」
「おや、そうなんですか? ありがとうございます」
「すみませんね? この子が、いい子に出来たご褒美に何がいいか聞いたら。大将さんのご飯がいいって」
「構いませんよ? 仕入れは終わったので、仕込みも落ち着いていますし」
昼過ぎだったのが幸いだった。
今日は気分的に朝イチで響也となって、柳橋に行って仕入れをしてきたお陰で。昼過ぎには、仕込みが完了していた。
ランチ営業は、ひとりで切り盛りしているせいでなかなか出来ないでいるが。今日くらいはいいだろうか。貸し切りにさせるのも悪くない。
了承すれば、灯矢が火坑に両手を差し出してきた。
「心……のかけら」
一度きりなのに、覚えていたのだろう。
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