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星の中に
霞む瑠璃色。そこに、いびつな瞬きを見つけて彼は色めき立つ。まだらに走る煌めきの管、そこから取り零された灯の、不安定に明滅すること。
グロテスクな光の螺旋が、ぞっとするくらいに美しくて、もはや好奇心は秘しきれない。
「地球って不思議だね。星の中に星がある」
一望はむず痒そうに、ぶわっと一閃、白い輝きを轟かせる。
そのすぐ隣で、彼が放つ光輝は単調だった。「千景」と呼ばれてやむなく目を遣れば、爛々とした無邪気な眼差しにまんまと捕まる。一望よりもずっと昔からここにいた彼は、辟易しながらもやはりぴくりとも乱れずに、冷めた口調でその間違いを指摘した。
「あの中で瞬いているのは星じゃないよ」
僅かばかりしゃがれた千景の囁きが、一段とまた一望の心に火をつける。
「じゃあ、何?」
この間にもあちこちで弾け、びくびくと脈打っている。たまらなく面白いから、聞き返しながらも目は離せない。星ではないなら、何だと言うのか。その姿の真実に、彼は俄然身を乗り出す。
「…ただの光。燃やしたエネルギーの、成れの果て」
だから一望は拍子抜けした。
「だったら一緒じゃない。僕らだって燃えている」
ほら、と言えば二度三度、彼の炎は可憐に揺らめく。
「一緒なものか。僕らは自分の命を燃やしている」
「もー。なら、あれは何を燃やしているって言うのさ」
一望はぷっくり頬っぺを見せつけて、千景の言葉に噛みついた。ねえねえと、せがむ一望の指差す先で、滲み閃くその渦が、次々とまた産まれて消えて。千景はそれらを一瞥したが、炎は異様なほど静か。
ただ一度、瞬いたときを除いては。
「…他の命だよ」
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