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憎々しげに浮かんだ千景のその答えが、一望にはとっても可笑しくて、
「あっはは」
今にも転げ落ちてしまいそうだった。
「他の命だったらいけないの?」
いけないに決まっていると言いかけて、千景は寸前で口を噤む。きっとまたわらいながら「どうして?」と訊ねてくる、それを捩じ伏せる言葉を、彼には見つけられなかった。
ただの嫌悪かもしれないから。他の命を食いながら、その上を我が物顔で踏みつけて、煌々と爆ぜては下劣に飾る、そんなモノを生んだ心理が、そんなことをしてでも生きようとする目的が、解せなくて。
「……」
押し黙る千景の胸の内など、一望には微塵も分からなかった。
「…僕はあそこへ降りて見てみたい」
ただ純粋なその火の、有り余る目映さ。千景をくらりと悩ませる。
なぜ彼はそれを求めるのか。憧れや興味がそうさせるのか。それは、他者を敬うことよりも、隣人を愛することよりも、優れたものだと言えるのか。
問うたところで仕方がないのも承知の上だ。幼さゆえに酷さを残した彼の目には、知らないことが多過ぎて、だからこそ満たすことに飢えている。
「だめだよ。そんなことをしたら…」
きっとそれだけのことなのだろう。だから、他の命を奪うからと言っても、君の炎が消えるからと言っても、
「…」
それこそ誰かが悲嘆に暮れるからなんて言ったって、彼を止められはしないだろうことを、千景は即座に悟ってしまう。
その火が、ぐらんぐらんと滅茶苦茶に暴れる。縁が赤にも白にも黄色にもなる。今にも爆発するのではないかというくらいの烈しさで、そうなれば屑となってしまうのに。一望はこんな彼を見たのは初めてだった。もっと見たいと、うずうずした。
「そうしたら、どうして他の命を燃やすのか、分かるかもしれないね」
チカチカ、と彼はわらった。
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