第32話 まるでアナタは弱みに付け入る悪魔のように−1

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第32話 まるでアナタは弱みに付け入る悪魔のように−1

 俺は真っ暗闇に沈んでいた。  思い出せる記憶はシンクの足元から広がった影に飲み込まれた直前までだった。 「おい、シンク? いるのか?」  俺は試しに暗闇の中でどこにいるともわからないシンクに呼びかける。  当然、返事はなかった。  事故だったとしても故意だったとしても、どちらにせよ、シンクの創り出したと思われるこの暗闇の世界をどうにかしなくてはならない。 「息は…………出来るな」  自らの呼吸を確かめ、すぐには危険性がないことを知って俺は安堵する。  とはいえ、ここからどうやって抜け出せば良いのか一切が不明なこの状況は決して良いものではない。 「おーい! 誰かいないのか!?」  俺は周囲に大声で呼びかけながら歩き始める。  足元には固い地面の感触はあるため、少し歩き回って探索してみようと考えたのである。 「むぎゅう!?」  だが、七歩程前に進んだ先で俺の足が地面からせり上がっていると思われる謎の柔らかい物体を踏みつける。 「うおっ!」  俺は驚いて足を離す。  俺の足に踏みつけられた何かは悲鳴のようなものを上げるが、それは明らかに人間の声だった。 「痛たたたた……一体誰よ、ワタシを踏んでくれたのは」 「わ、悪かった! 気が付かなかったんだ!」  謎の声の主に対して、俺は必死に謝る。  謎の声は言葉遣いこそ女性だったが、声のトーンから男性のものだとわかった。 「んもう。仕方ないわね。明かりを点けてあげるわ」  声の主がそう言うと、囁くような小さな声で呟く。 『I love you』  すると、暗闇に黄色い炎が浮かび、俺たちの周りを照らし出した。 「あら、なかなか可愛い顔をした子じゃないの。お名前は? ワタシはマミヤよ」  俺の前には背の高い背広姿の男が立っていた。  マミヤはおよそ20代後半の外見年齢であり、顔はハンサムだったが、言葉遣いは完全にオネエだった。 「お前は何者なんだ?」 「ワタシ? ワタシはアンコール魔法学院の教師で、今回の編入試験の試験官をしているの」  ニタリと笑顔を浮かべるマミヤの正体を知った俺は思わず彼に対して身構える。 「そう警戒してくれなくてもいいわよ。ワタシはハクマきゅんみたいに好戦的なタイプじゃないから」  俺はマミヤと目を見合わせて彼から敵意がないことを感じ取って構えを解く。 「素直な子ね。キミなら協力してくれそうだわ」 「協力って、ここからの脱出か?」  俺が問うと、マミヤはコクコクと頷いた。 「そうよ。ワタシも気がついたらここに飲み込まれていた訳だけど、たった一人では抜け出すことも出来なくて困っていたのよね」 「ということは、お前はここから脱出する方法を知っているのか!?」 「ええ、やり方は簡単よ。ワタシが今やっているみたいに告白魔法で灯した情炎を周囲に振りまくだけ。告白魔法で生まれた影は告白魔法で相殺するのよ」 「なるほど……」  理屈がわかるようなわからないような不思議な気分だ。 「そういえば、さっき、この先でルミナちゃんを見つけたわよ」 「なんだって!?」  俺はルミナの名を聞いて、すぐに飛びついた。
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