その時が来るまで

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 寝転がっている時の親父はさえない、休みの日はお袋にも邪魔ですよと冷たく扱われている。  大学卒業を控え、就職も地元に決まった俺は一時的に実家に戻って来ていたが、四年ぶりに会う親父の背中は思っていたほど大きくなくて面食らった。  ガキの頃は口をあんぐり開けて見上げていた相手が、いつの頃からかそこそこ視線が合う様になって、気付いてみたら俺の方がずっと背丈が高くなっている。  俺がそんな事を考えていると(くだん)の相手と目が合った。 「お前も暇か、どれ、久しぶりに腕相撲でもするか。」  親父は体育会系の大学を出ていて俺が小さな頃からこういうのを好んだ。 どんなに必死になっても、顔を真っ赤にしようとも、ぎりぎりから容易(たやす)くまき返されたり手首をぐるぐる回されて力を抜かれたりと結局面白くあしらわれて組み伏せられるのが常だった。  お袋に邪険にされた威厳を取り戻しにでも来たのか?俺だっていつまでもガキ扱いされる訳には行かない。 「いいとも。」 「そう来なきゃな。」  言いながら親父がテーブルに上半身をどっかり乗せ腕を差し出す。 俺は相手を睨みつけながらそれを握った。 お袋が気付いて掃除機を放置してこちらにやって来る。
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