その時が来るまで

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「フン!フン!!」  瞬発的な力を加え、親父が俺の腕を傾けて行く。腕を外側にされればされる程、負けに近づけば近づく程体重を味方に出来なくなるばかりか相手にそれを許してしまう。俺は必死で耐えた。引き延ばされた腕がおかしな痛みを訴えるがまだ始まったばかりだ。俺は親父がしたように気合いもろとも頭を振って元の位置に戻す。  背中に汗が滲む、足に震えが来る。だが見ろ、親父の額にも汗が滲んで今目の辺りまでかかってるじゃないか。  俺はさらに力を込めた。持久力なら俺の方に分があるはずだ、無理を掛けた親父がすぐに反撃できるはずは無い。一瞬だけ微かに力を弱め瞬時に全力で押し返す、そんな小刻みな攻撃を繰り出し俺は親父を徐々に追い詰める。 俺の腕はゆっくりと優勢側に傾き、いつしか充分体重を乗せ敵をテーブルに押し付けようと言う所まで攻め入っていた。だがそこから一向に攻め込めない。鬼の形相の親父はそこからでも反撃を試みていた。静かに、ほんの少しずつだけ俺の腕が戻って行く。気づいた俺が気合いと共に再び押し返してもまたじっくり静かにじわじわと戻して行く。  なんて奴だ。俺は正直そう思った。全身を真っ赤にしてシャツをいつしか汗まみれにして、親父は鬼の形相で俺の腕を押し返そうとしていた。
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