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叔父も病気を持っており、もう何年も病院に通っている。それは、あたしにはわからないけれど、さぞかししんどいのだろう。
父が亡くなったということを病院から聞いたとき、叔父は祖父や祖母の仏壇の前に座ってジッと拝んだそうだ。
病院につくと、病院はまだ営業しておらず、少しまだ夜が明けたばかりの薄ら明るい空だった。空はいつも通りだと言うのに、たった一瞬であたしの周りはこんなにも変わってしまった。それでもまだ、実感がわかず叔父に言われるがまま、叔父と父がいた病室へと向かう。
向かってる最中歩いていた廊下はまだ暗く、ひと気がない。父が死んだ。その事実が自分の中でどんな風に消化されるのかさえもわからず、無心で父の病室に足を運ばせていた。
そして、看護師に案内されたその部屋で静かに父がベッドに横たわっていた。まるで眠っているように穏やかに。
そんな父の姿を見たとき叔父が嗚咽を漏らして泣いていることに気付き、気がつけばあたしも泣いてしまっていた。こらえていたものが、すべて解放されたように大粒の涙と一緒に流れて行った。
叔父は父に向って、涙を流しながら「頑張ったなぁ」とつぶやいた。叔父は父にいろんな言葉をかけるのにあたしは、それでも何も言うことができずただ、泣くことしかできなかった。
最後に会ったあの日、父は泣いていた。「もうええやろ」と仕切りに言っていた。しんどかったのだろうか。つらかったのだろうか。
誰も看取るものがいないなか、父は何を考えて旅立っていったのか。
親不孝な娘だった。ひたすらに父が苦手になって避けてしまった。
癌になった時も、あたしは父に会うことができなかった。今までの確執もあって、自分から行こうとは思えなかった。
いくら相談した人たちに言われても、父親に会いに行くことを戸惑ってしまった。
でもたしかに目の前に眠る父は、本当に安らかな表情だった。
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