13人が本棚に入れています
本棚に追加
慣れたことなのか、店員はにっこり笑って男の手を両手で包むようにしてから、そっと手を離した。
「少々お待ちください」
一旦カウンターを離れた店員は、店内から1冊の本を持ってすぐに引き返してきた。表紙は、こちらからは見えない。
「こちらが本日のおすすめでございます」
「またけったいなもの持ってくるねぇ」
呆れたように言いながらも客は財布を開き、いそいそと帰っていった。
(何だアレ)
他に店員はいないのだろうか。周りを見渡しても、閑散としていて人の気配がない。
店員は、何事もなかったかのようにカウンターの中に戻っていく。
客に手を握られるのは、日常茶飯事なのだろうか。それくらい、どうってことないのかもしれない。
(俺なんか、女の子の手を握ったことすらないのに……!)
もやっとする気持ちのまま、つい視線で追ってしまっていると、店員と目が合ってしまった。
(あ、ヤベ)
最初のコメントを投稿しよう!