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「こんにちは」
「……あぁ、ええと……こ、こんにちは」
口の中でもごもごと転がすように、何とか返事をしながら、不躾にならない程度に店員を観察する。
小柄な人だった。真っ直ぐな黒髪に白い肌、白いブラウスに緑色のエプロン。黒目がちの瞳は、眦でキュッと上がっているが、全体の印象が地味なせいか、どちらかと言えば気が弱そうにも見える。
まあ、俺のタイプじゃない。年上だろうし。女性の年齢はよく分からないが、学生バイトというわけではなさそうだった。落ち着いた雰囲気がある。
「何かお探しでしょうか」
特に、と言い掛けて一旦口を閉じる。
「……おすすめって、ありますか?」
さっきの客が言っていたのが気になっていた。差し出された物は不本意そうだったのに、帰る姿は嬉しそうだった。
店員の手を握れたことが嬉しい、ただのエロ親父かとも思ったのだが、それならもう少し店員に絡もうとするのではないかと思ったのだ。
「何かご希望はありますか?」
「いえ、これといってなくて」
「では、もしよろしければ、こちらのアンケートにお答えいただいても?」
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