2人が本棚に入れています
本棚に追加
/16ページ
☆ ☆ ☆
「行ってきまーす!」
家に子どもの声が響き、義は目を覚ました。
「……行っちゃったかぁ」
右手の甲を額に当てながら呟くように言った。
「……何度か起こしたんだけど」
義は手を額から退かすと、そこには見下ろしている妻の美奈子がいた。
「優、ぎりぎりまで待ったんだけど……ごめんね」
「……いや、おれが悪んだ」
起き上がると、頭を掻いた。
「……今度こそっては思ってたんだけど」
「お仕事、大変なんだから無理しないで……それに今度の土曜日もわたしが代わりに行くから……」
「いや! おれは何がなんでも今度の土曜日には絶対に父親の授業参観日に行く! これ以上、あの子をがっかりさせる訳にはいかない!」
口調がきつくなったのに、気が付き、義は美奈子を見た。美奈子は目を細め、義を見ていた。
「……マント、ちゃんとアイロンをかけたよ」
「……ありがとう、美奈子」
義は美奈子が持っている綺麗に畳まれた赤いマントを受け取った。
最初のコメントを投稿しよう!