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1. ゴンドワナ
ゴンドワナは北のミノ国、南のオハリ国に挟まれた地だ。ローラシアと並んで、天上人に重用された地である。天に浮かび、天上から地と海を支配する城の機関部が作られていた。
山を崩し地を掘り返して、採掘した岩を砕き、土を洗い、奇生石を抽出する。それを焼き固めると、天上石と呼ばれる白い石になる。
天上石は天の城に運ばれ、最後の行程を経て、闇の中でも自ら輝く斐光石となる。
しかし、王ラピ・ユタが天上の城の破却を命じた時、始めに斐光石の製法が破却された。
斐光石の無い天上の城たちは、次々と地に落ちて朽ちた。
天上人の庇護を失ったゴンドワナは衰退した。
天と地を結ぶ港は閉鎖され、万の人が住んだ街は消えた。今は、湖のほとりに畑作と牧畜の民が住む村が点在するばかり。
村と村の間には円錐形の山が幾つもあった。奇生石を抽出した残りのズリが、高々と積まれて山になった。山の表面には低い草が生い茂り、山羊や牛が放牧されている。
山の麓、モシリ村にはコシャマインのレンガ工場がある。山からズリを掘り出し、焼き固めてレンガを作っている。かつては天上石を作っていた工房の名残りだ。コシャマインは天上人の名前で、それを工場の呼び名として受け継いできた。
「タロンジ、薪が着いたぞ。馬車から下ろしておけ。わしは手が放せない」
「はい、親方」
タロンジは手を止め、建物の外を見た。薪を山積みにした馬車がいた。
ニシパ親方を見れば、細めた目で炉の窓から中を見ている。下の口から追加する薪を手にしていた。薪で炉の壁をたたき、カン、音で薪の乾燥の具合を確かめた。
炉に火を入れたばかり。火力が安定するまで、トイレに行く間も取れない。火が安定したら、下を口を閉じて、炉の温度を上げて行く。
「やあ、キムン小父さん、薪はあっちの小屋へ」
タロンジは馬車に駈け寄り、薪の乾燥小屋の端を指した。新しい薪は半年以上かけて乾燥させる。十分に乾燥した薪でなければ、レンガを焼く強い火力が出ない。
薪の断面を見た。山にある間、薪は湿らせておく。山火事を防止するためだ。断面に水が湧いていたら、乾燥には時間がかかる。
「タロンジも一人前になったなあ」
「いや、まだ炉の火の面倒は見させてもらえないよ」
キムンは白いひげをなでて笑う。
タロンジは首を振って応え、工場の隅にある壊れた炉に目をやった。
タロンジは18才になる。コシャマインで働く職人だ、今年で5年目。父はエコマ、母はウヌカル、どちらも職人だった。
6年前、大雨と強風の時、炉の上の屋根が壊れた。屋根の梁が炉に刺さり、壁に穴が開いた。炉の中に水が流れ込んだ。前日から焼き入れを始めた炉は高温で、爆発が起きた。両親は火と瓦礫の中で死んだ。
以来、ニシパがコシャマインの工場を取り仕切り、タロンジの親代わりとなった。
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