とどく、とどく。

『お父さんへ。

　少し恥ずかしいけれど、お手紙をしたためることにしました。まだ直接会って気持ちを伝える勇気が出ないこと、お許しください。本当は今すぐ抱きしめてほしいけれど、きっとお父さんもびっくりすると思うので我慢しますね。
　お父さんは携帯電話を持たないことにしていると言っていましたが、今はどうしているのでしょうか。
　お別れしてから、十年が過ぎました。今は、少しはデジタルなものに慣れたのでしょうか。
　まずはメールでゆっくりやり取りがしたいです。このお手紙への返信に、アドレスを書いてくれると嬉しいです。
　あの頃まだ高校生だった私も、今では立派な社会人になりました。お母さんと離婚してから、お父さんはきっととても苦労したと思います。あの家を捨てて出ていって、仕事も変えるなんて本当に大変だったことでしょう。
　今も、辛い思いをされているのでしょうか。
　私でよければ、いくらでも相談に乗ります。
　お返事ください。

　　　　　　　　　　　あなたの娘、都より』