とどく、とどく。

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 *** 『お父さんへ。  前回のお手紙は、とにかくぼんやりとしたことしか書けなくてごめんなさい。  お父さんの近況を聞くのであれば、まず自分のことからきちんとお話しなければいけないですよね。  私は今、とある会社でデータ入力のお仕事をしています。給料もそこまで高くないし、正社員ではなく契約社員ではありますが、以前務めたところと違って完全週休二日制であるのが幸いです。  お母さんが亡くなったことは、ご存知でしょうか。あの人は一年前に、病気で寝たきりになって死にました。お父さんを蔑ろにした天罰が下ったのでしょう。そもそもお母さんがお仕事で忙しいお父さんをきちんと労わないで、嫉妬ばかりするからお父さんに愛想をつかれてしまうんですよね。  私は、本音を言うとお父さんについていきたかったです。とてもとてもついていきたかったのです。でも、お父さんが、お母さんを頼むと言ったから仕方なく残りました。お母さんも仕事をしていて収入があったし、私ももう小さくなかったから、私を残していっても大丈夫だと判断したのでしょう。  晩年のお母さんは、酷いものでした。  元々、私がお父さんが恋しいと泣くと、鬼のように怒る人でしたけれど。それが、病気になってからはますます酷くなったのです。しまいには、私を鬼か悪魔のように罵倒する酷い人でした。あれが私の母親だなんて、正直今でも認めたくありません。l  何故、お父さんはあんな人と結婚したのでしょう。  お返事ください。            あなたの娘、都より』
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