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「……ところで、天津さん、北海道に行く前に聞いても良いかしら」
「おや、なんでしょうか?」
「天津さんの事なんだけれども」
「なんなりと」
また、あの糸目の笑顔で天津が微笑む。どう聞いても望む答えが帰ってくるような気はしなかったが、美穂は小さく息を飲んで口を開いた。
「貴方は、一体何者なの?」
「……ほう」
「前に契約した時は、突然の出来事が沢山あって、
立ち止まって考えられなかったけれど……
寮の管理人代理になった事といい、次彦さんを失った事といい、
ただの偶然とは考えられないわ。
貴方が直接、危害を加えたと言いたいわけじゃないの。
これまでに起こった出来事は、そんな話で説明できるものでもないと思う。
……だから、もう一度聞くわ。貴方は、何者なの……?」
「私は……」
天津が、パチンと扇子を畳む。
それをそっと掲げながら、彼は小さく首を傾げた。
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