僕の願い事

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僕の願い事

僕の願い事は、ひとつだけ。お母さんを僕から解放して、自由にしてあげること。 テーブルの上には、開いたままのマンガ雑誌と、食べかけのスナック菓子。 壁には、かけたまま放置された制服。これが、僕の部屋。ありのままの、僕。 部屋の窓を開け、天を見上げる。雲一つない空は、ミッドナイトブルーの濃淡が美しい。今夜は流星群が見られると、テレビで言っていた。 小さい時、お母さんが教えてくれた。手を組んで、お星様にお願いすると、願い事が叶うって。今日のお星様なら、僕の願い事を叶えてくれるかな? 「お星様、お願いします。どうか僕を空に連れて行ってください」 手を組んで、ギュッと目をつぶり、お願いする。 「お母さんが、なにも心配しなくてすむように……」 弱い僕は、お母さんの重荷でしかない。だから、どうか、お願いします……。 ゆっくり目を開けると、空からたくさんの星が降ってきた。まるで、僕の願い事を聞き届けてくれたみたいに。 「すごい……」 僕は嬉しくなって部屋を飛び出し、階段をかけ下りる。 「トウマ? どうしたの?」 お母さんの声が聞こえたけれど、立ち止まってなんか居られない。今すぐ、外に出ないと、間に合わない。そんな気がする。僕は靴を穿くのも忘れて、裸足のまま家の外に飛び出した。 「お星様、僕の願いを……!」 その時、体中にドンッと大きな衝撃が走った。 あまりに突然の出来事で、何が起こったのか、わからない。自分の体が宙を浮いていると気づいた時には、もう。間に合わなくて。 小さく悲鳴をあげると同時に、地面に叩きつけられた。
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