母親

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自宅に帰り、押し入れを開けると、1冊のアルバムを取り出した。ここから、トウマの遺影写真を選ばなくてはいけない。 震える手で、ページをめくる。アルバムの中には、笑顔のトウマが写っていた。 トウマがこの世に居ない。その現実が、わたしの心をギリギリと締めつける。 「わたしは、わたしは……」 わたしはただ、トウマの笑顔を守りたかった。あの子が生きていてさえいてくれれば、それだけで幸せだったのに……。 「どうして、こんな事に……」 パラパラとめくり続けたページが、中学の入学式で止まる。あの子の写真は、ここまでしかない。中学に入学して間もなく、父親の死をきっかけに、あの子は自室に引きこもってしまった。 こんな事になるのなら。何も話さず、ただ二人で、共に時を過ごせば良かった。 「写真の1枚くらい、撮っておけば良かったな……」 幼い顔のあの子を眺めて、ポツリと呟く。永遠に続くと思っていたあの日々は、もう戻らない。
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