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ドラマ作り
翌日、中村優子は黒は黒でもパフスリーブのカワイイワンピースを着ていた。
いつもは黒の上下のスカートのスーツと白いワイシャツで、面白くもなんともない。
ちょっとおしゃれをしているのは昨日の返事がイエスなのだろうと祐二は思った。
しかし、化粧が、だいぶ濃いようだが、それを指摘したものか。
頬紅が濃すぎる。アイシャドーを三色位入れているのだが、とにかく濃すぎる。
ドラッグストアに美容部員がたまたまいたので、化粧しなおしてもらった。新しいファンデーションなど買うことになった。
優子は自分の化粧がやはり失敗だったと思って落ち込んだ。
祐二は「かわいいな」
優子は少しむくれて「からかってんの?」
ドラマのスタッフはあまりやる気のなさそうな男と、やる気マンマンの女性だった。
男はディレクターで、女はシナリオライターで、はじめてのドラマだという。
祐二も優子も不安を感じた。
二人になったとき祐二は、「政治家がコネ使って企画をねじ込んで、いやがられて当たり前かも知れない、それにしても、新人のシナリオライターを使われるって、なんだかなあ」
「あ、でも他にベテランの方も担当してくれるそうなんで、でも、はあ、前途多難ね」
「あれ?ベテランも?」
「聞いてなかったの?」
「あのディレクターのやる気の無さになんだかなあと思っちゃって」
「それは私も」
「ちょっとどっか寄ってく?」と言う祐二の言葉は優子の
「そうだ!ゲイカップルやナベカマカップルにシナリオライターに会ってもらいましょうよ」
という大声にかき消されてしまった。優子の声は時々デカイ。
何度か会って話を聞いて、シナリオライターもディレクターも、子供を育てていく悩みや夢も普通の親と変わらないのかもしれないと思いだした。特に子供を養子にして、熱が出れば看病し、心配し、子供が嬉しそうなら自分たちも幸せ。
子供が成長したら、異性も愛しても同性を愛しても認めてやりたいと語る。自分たちが特殊だから片寄らないように普通の家庭のことも伝えたい。
いっそのことドキュメンタリーが良いのでは?という提案もあったが、あくまでもドラマでと。
ゲイやオナベやオカマに偏見がないと、意識調査で判断された住民達も入居して、皆結構仲良く中庭で一緒に子供を遊ばせて、よいかんじになった。
3ヶ月後、二時間ドラマとして放送された。
コミュニティの温かいムードで、事件は子供が熱を出したりいなくなって探したりで、あまり視聴率は良くなかった。
しかし、あのマンションに住みたいとか、みんな優しいとか、後からツイッターで少しずつ話題になり、再放送され、じわじわと、話題になり、続編が見たいという声もあった。
「一緒に仕事して、たくさん会ってるんだから付き合おうっていう俺らの話は?」
「え?それなんの話?」
「え?おいおい若いのに忘れた?嘘だろう」
「あはは、ウッソー。これからデートでもする?」
なんとなくツイッターを見た優子の顔色が変わった。
「見て!」
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