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ある晴れた日の話だ。
なんて事の無い日常の、ほんの一瞬の出来事だ。
「彼女の様子はどうですか?」
僧侶の格好をした男が、そう彼女に問い掛ける。
彼女、ここ、黒巣屋の店員である彼女が無表情な顔で答える。
「しばらく彼女は店には来ていません」
「そうですか……どれ位来ていないのですか?」
「ここ二か月ほど、彼女は店には来ていません」
そう言って、店員は僧侶の格好をした男の前に白塗りの器を置いた。
中には抹茶が少し入っている。
男は、それをズズッと音を立てて飲み干すと、悲しい顔をして中身の無くなった器を眺めた。
「そうですか……残念です」
「残念ですわね」
「ええぇ、残念です。彼を呼ばなくては……」
「そうですね……」
男も店員も、そろって中身の無くなった器に目を止めたまま、しばらく動かないでいた。
店の外は、気持ちの良い風が駆け抜け、小鳥が歌っている。
これはそんな晴れの日の、ほんの小さな出来事。
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