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これもまた、良く晴れた日の話だ。
場所は黒巣屋。
時計の針は午後三時半を指している。
僧侶の格好をした男が一人、座席に座り、くつろいでいる。
彼のテーブルの上には雀が飛び立とうとしている絵の描いてある朱塗りの茶碗が乗っていて、それから抹茶が薫っていた。
僧衣の男は歳はそれなりに取っている様で、目じりや額にうっすら皺が見えるものの、精悍な顔立ちだ。
彼は一口、抹茶を啜ると、あくびをかみ殺して店の壁掛け時計に目をやった。
時計はアンティークで高価な物であると、彼は知っている。彼は、にんまりと笑みを浮べて時計を見る。
この時計を見る事が彼がこの店に来る時の楽しみの一つでもあった。
僧衣のこの男の、そのくつろぎ様からは、想像も出来ないが、この男はこれから憂鬱な話し合いをある人物としなくてはならない。
この優雅な空間で、その憂鬱な話し合いをしなければいけないと言う事実に、僧衣の男の心中は複雑だった。
こんな話し合いは、本来なら、この男の望む所では無いが、それも仕方の無い事だ。
こうなった今、早く話し合い、上手く事を運ばなければならない。
僧衣の男があれこれ考えを巡らせていると、ガラーンと店のドアベルの音が鳴り、話し合いの相手が姿を現した。
「いやいや! お待たせしましたかな? ご住職!」
そう言って現われたのは、恰幅の良い中年の男だった。
彼は、手に持った扇子で禿げ上がった頭をぱたぱた仰ぎながら僧衣の男に近付く。
「いいえ、私もさっき着いたばかりで……どうぞお掛け下さい」
僧衣の男にそう言われ、男は席に着くと、大声で店員を呼び寄せ、アイスコーヒを注文した。
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