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「お忙しい所、お呼びたてしてすみませんでした。彼女の事で、どうしても貴方にお話ししておかなければならない事があったものですから……所で、彼女は?」
「ああっ……あの子は、学校が遅くなっているんでしょう。もうすぐ来ると思いますよ」
男は、扇子で自身を仰ぎながら僧衣の男の問い掛けに答えた。
「学校……彼女は学校へ行っているんですか?」
僧衣の男が怪訝そうな顔で言う。
「そっ、それは勿論ですよ! 所で、何ですかな? ご住職、あの子の事で話しと言うのは?」
男にそう問われ、住職と呼ばれるこの男、実際、寺の住職である僧衣の男は苦笑いして話し出した。
「貴方が彼女を引き取ってから、もう半年が過ぎますね」
「ええぇ、もうそんなになりますか」
「はい、もう半年……彼女の家の事は、初めにお話ししたかと思いますが、代々続く大変な資産家で、彼女の家族が全て亡くなったため、彼女の引き取り先を探していた時に、貴方が彼女を是非引き取りたいと言うのでお任せしたんです」
僧衣の男の話に、男は、ただただ頷くばかりだ。
「それで、私も貴方の事を調べた上で彼女の引き取り先にふさわしいと思い、お任せしたんですが……」
「なっ……なんですか? ご住職? 何をおっしゃりたいんです?」
男は額から汗を流しながら僧衣の男を上目使いに見た。
僧衣の男はニヤリと笑みを浮べ、話を続けた。
「彼女の家は、古くから続く由緒ある家で、どんなに不景気でも、彼女の家から金が途絶える事は無かった。それは、彼女の家が、ある神様を奉っているからだ……と言うのは会社経営者の間では有名な話らしいですね? 貴方はご存じでしたか?」
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