第2話 いきがみ

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 神社仏閣は日本中に多く有り、多くの人が信仰心は無くとも初詣でに行っている日本で屋敷神を奉っているからといってとやかく言う人は少ないだろうが、憑物となると、その時の時代の風習も有ったのかも知れないが、差別の対象になった例も少なくない。  僧衣の男は、だから男に彼女の事情は伏せたのだ……と、男に説明した。  彼女の家が憑物筋と言うのはただの噂だ。  本当の所は僧衣の男も誰も、今となっては解りはしない。  それは、彼女ですら分からない事なのだ。 「聞いた事は無いですか? 彼女の家の、この事を?」  僧衣の男にそう問われて、男は少しの沈黙の後、言葉を選ぶ様にゆっくりと話し出した。 「初耳ですな……それに、憑物とはなんですか?」  男は、そう言うと、グラスの水をゴクリゴクリと音を立てて飲み干した。  男が空になったグラスをテーブルに置いた、そのタイミングで、店員がアイスコーヒーを盆に載せて現われた。 「アイスコーヒで御座います」  分かっている。  男は心の中でそう呟いた。  男は今、水で喉を潤したばかりだ。 もう喉は渇いていない。  男は、テーブルに置かれたアイスコーヒがたっぷり入ったグラスを冷ややかに見た。 「お姉ちゃん。もう少し早く持って来てくれたら良かったわ!」  そう言う男に、店員は「かしこまりました」と一口言って下がって行った。 (かしこまりましたじゃ無いだろ! 全く、最近の若いヤツは!)  男は、ため息を付いてアイスコーヒーを一瞥した。
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