第2話 いきがみ

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「大丈夫ですか?」  僧衣の男が男に言う。 「ええ、だっ、大丈夫です。後で飲みますよ」 「アイスコーヒーの事では無く、話を続けても大丈夫か聞いたのですが……」 「ああっ! どうぞ! どうぞ! いくらでも続けて下さって結構です!」  男は、冷房の利いた店で、扇子をヒラヒラ仰ぎ僧衣の男に笑顔で、そう答えた。 「では、話を続けましょう。貴方が知らないと言うので、彼女の家で奉られていたと言う神の事をお話しさせて頂きますが……彼女の家は、子孫繁栄、商売繁盛を願い、神を奉っていた様で、それを、憑物であると噂する人達もいた様なんですね。あの家は憑物を使って儲けていると、そう言う人達がいる。貴方達経営者の間での噂ですが、貴方は本当にご存じ無いんですか?」 「ええ、彼女の家の神様の事も知りませんし、憑物とは……名前くらいなら聞いた事は有る様な気がしますが、何の事かさっぱりで」  そう言う男に、僧衣の男は、疑わしいそうな視線を送った後、分かりましたと言って話を続けた。 「憑物とは、一説に依ると、呪術的な目的を持って奉られる神(動物霊)であるとされている様で、その神を一族で代々奉り続ける家、その神を使役する家を憑物筋と言う場合が有ります。憑物として有名なのは、先ほどの話しにも出た、狐、犬神等になりますが、そう言った神を彼女の家では代々奉っていると言われているのです。憑物は他家の富を盗み、憑物筋の家を繁栄させる等と言われ、それ故、憑物筋は敬遠されてきたと言われていますが、根拠の有る事では有りません。また、憑物筋の恨みを買うと不幸になる、ともされていますが、これもまた何の根拠も無い事です。しかし、全てがそうとは言いませんが、憑物と言われる神を奉っている家の中に、富める家が有る事は事実の様で、彼女の家が憑物筋かはともかく、神を奉っている富める家であった事は事実である様です」
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