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男はアイスコーヒーの入ったグラスを、ビシリッと指さす。
「何で持って来た?」
言われて店員が首を傾げる。
「先ほど、もう少し早く持って来いと……良く冷えて、飲み頃で御座います」
店員は、言い終えると一礼して席を離れた。
男は、テーブルに二つ並んだアイスコーヒーと去って行く店員の姿を交互に見ながら困惑した。
(そう言う事じゃ無いだろ!)
男は心底イラついた。
「アイスコーヒーもたっぷりある事ですし、まぁ、しばらくお付き合い下さい。話を続けさせて頂きます」
僧衣の男は口元に笑みを浮べている。
アイスコーヒーの件がうけたのだ。
僧衣の男は笑いをかみ殺し、コホンッと咳払いをした。
「ええっと、何処まで話しましたか……そう、彼女の家の神、おこちょはぎ様。私はこの神様の事がどうにも気になりまして、調べてみたのですが、調べて、調べても分からなかったのです。神にも憑物にも、その様な名前のものは無かったのです。私の調べが足りなかったと言われればそれまでですが……」
「それは、あの子の家だけが拝んでいた神と言う事では無いんですか? おこちょはぎ様、ですか? その神様を拝んでいるのがあの子の家だけだとすると、他に同じ神様を奉っている家が無い限りは詳しい事は分からないものでは無いですかな? 誰にも知られず、その家だけでこっそり拝んでいる神様ならいくら調べた所で他から情報は得られないでしょう? しかも、あの子の家族は……皆、亡くなっている訳ですよね。聞くとしたらあの子にという事になりますが……」
僧衣の男の話を遮る様に、そう男が口を挟む。
男の言う事に、僧衣の男は深く頷き水の入った自身のグラスに口を付けた。
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