第二章 サイダー

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 こんなに長く付き合いがあって、我ながら今更だなぁとは思うけど。何度も同じことを思う。高藤さんは優しい。  最初の頃はこんな風に関係が続くなんて思ってもなかったのに不思議なものだ。  白菜とお肉を同時に口に入れる高藤さんを見て、いいなぁ美味しそうだから次にやってみようかな、なんて思っていると高藤さんがちょっと笑いながら口を開いた。 「坂本ってさ」 「なに?」 「意外と抜けてるよね」  にやりと笑いながら言った高藤さんの言葉がなんだか妙に面白い。  なにそれ、と僕がひゃひゃひゃと笑うと高藤さんも、本当にね、と笑った。 「よく知らない頃は、なんか怖い人だなぁって思ってたのにさー」  なんか損した気分だよね、と皮肉っぽく笑う高藤さんに、あー、まあ、それは、うん、と曖昧に頷く。  高校生の頃、僕と高藤さんは同じ人に片思いをしていた。  綾坂さんという可愛らしいその人に僕は必死で話しかけていたけど、素知らぬ顔でいつも隣にいる高藤さんが羨ましくて仕方なかったのをよく覚えている。  だから少し意地悪な物言いをしたこともあった。今からすれば申し訳ない限りなのだけど。  僕が高藤さんを羨んだのと同じくらい高藤さんも僕を羨んでいたらしい。  僕らは案外似た者同士なのかもしれない。同じ人を好きになったことだし。  結局どちらの恋も叶わず、綾坂さんは好きな人と恋人になってしまった。どうしようもない現実だった。なにができるわけでもなかった。  その後もなんとなく一緒にいて気が合う友人同士になっているのだから人生ってわからない。
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