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「真奈は来るらしいよ」
どう反応していいものか迷った挙句にコップに手を伸ばしてちびちびと烏龍茶を飲む。
口の中に懐かしいサイダーの味が蘇った気がした。そんなはずはないのに。
高校卒業と共にほぼ縁の切れた状態となった僕と違って、高藤さんはいまだに綾坂さんと薄っすら繋がっているらしい。といってもたまに近況報告程度らしいけど。
まあ僕に言わないだけでそれなりに話してるのかもしれないけどね。その辺は別に問い詰めたりはしない。聞いてもどうしようもないし、どう反応していいかもわからない案件だから。
高藤さんが羨ましいかと言われると、別にそうでもないというのが本音だ。
綾坂さんを嫌いになったわけではもちろんないけど、どうこうなることなんてとっくに諦めてる。あれから他の人とそれなりに恋も交際もしたし。
とはいえ簡単に流せるほどの想いだったかと言われると、未だにたじろいでしまうほどは好きだった。
どうしようもなく恋をしていた。青く幼く途方もない恋だった。高藤さんと同じように。
だけど恋していたから、今でも憧れを抱いているから、すごく会いたいかと言われるとまた違うのだ。
僕がいま、一番会っていて楽しいのは、高藤さん以外にいないから。
一番会いたい人間が必ずしも恋に直結しないなんて、当たり前のことだ。
「……綾坂さん、最近、その、元気してるの?」
「してるんじゃない?」
私に聞かれても、と薄く笑われる。
それはそうだ。確かめたいなら同窓会に行けばいい。
そのためにあるようなものだろう、同窓会なんて近況報告とか顔合わせとか、まあそういうやつだ。
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