第二章 サイダー

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 会いたい、のだろうか。僕は綾坂さんに会いたいのだろうか。  すごく会いたいかと言われればそうではないが、会いたくないかと言われると別にそうではない。  でも会えば確実にあの頃の自分が引きずり出される気がして、なんだかあの頃には感じていなかった羞恥心まで掘り起こされそうな気がする。  そう考えると、高藤さんと一緒にいる時の穏やかな気持ちは少し不思議だった。 「ねえ、写真とかないの?」 「写真?」 「その人とは撮らないの? ご飯食べた時とかたまに撮ってるじゃん。そういう時のでさ、その人が写ってるのが一枚くらいあるんじゃないの?」  なんだろ、これ、家族と一緒にいるのとはまた違うんだよな。なんていうか、同志、みたいな。  いや別に今は同じ人に恋してないんだけどね。あの時はまさしく同志だった気もする。叶わない恋なのでライバルではなかった。 「高藤さんは最近どうなの」 「どうってなに。主語を入れなさい、主語を」 「会社に気になる人いるって言ってたじゃん」  あれいつだっけ、結構前だっけ。思い出すように言うと、高藤さんがなんとも嫌そうに顔を顰めた。とてもとてもわざとらしい。 「……いるけど」 「どーなのさ、脈あり?」 「なしよりのなし」  ばしん、とはっきりきっぱり切り捨てられる。  自分のことなのにはっきりと言えてすごいなぁ。僕はつい脈なしだなぁと思ってもチャンスを探ってしまう。  うん? これは高校生の頃から変わってないということにならないだろうか。それはいかがなものだろう。 「なんか好きな男の人いるっぽい」 「デジャヴを感じる」 「うるっさいなぁ」  いやだってすごいデジャヴでしょ、と言うと堪えきれなかったらしい笑い声が聞こえた。
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