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「なんでって、それは……」
私の剣幕に坂本が怯んだ。
初めて崩れた坂本の顔に、私はまたも苛々としながら叫んでしまう。
ここが学校だということなんか忘れて叫んだ。
「馬鹿にしてるんでしょ。女のくせに、なんで女が好きなのって笑ってるんでしょ」
理不尽だ。坂本はそんなこと一言も言ってないのに。
これは八つ当たりだ。理不尽だ。
そんなこと、私だって分かってる。でも止められない。
買ったばかりのいちごオレを、私と真奈を繋ぐものを、地面に投げつけた。
放射線を描くようにして落ちてきた紙パックを、坂本はぎょっとしたように見つめている。
「私だってわかんないよ。なんで好きなのか、どうして好きなのか。でも、でも好きなの。仕方ないじゃない!」
なんで、なんで坂本は好きだと気づいてもらえるのに、私は気づいてすらもらえないの。
私の方がずっとずっと真奈のそばにいて、真奈に合わせて、真奈の話を聞いているのに。
私が真奈のことが好きだなんて、真奈はこれっぽっちも気づいていない。
それに真奈は気づいたって、きっと好かれて嫌な気はしないなんて言わないのだ。
坂本に対するような返答や笑みは見せないのだ。
驚いて怖かったり嫌がったりするのだろう。
私が女だというだけで。坂本が男だというだけで。
「別に馬鹿になんてしてないけど」
坂本は心底驚いた様子で私を見ていた。
小さく首を振って、馬鹿にしてないともう一度ゆっくりと私に告げた。
その目はもう冷ややかではなくて、でもどこか困惑しているようだった。
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