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彼女は初めから素直だった。
じゃあ、と俺好みになるためにこの世界で流行っているものすべての情報を集めたのだろう。
どこで何を見たのかはよくわからないが、彼女の中でわからないことはすべて俺に聞いてはアドバイスを求めた。
呪われるかもしれないという恐怖のせいで逐一答えた俺も俺だが、そのお陰か、ボロボロだった髪の毛が気づけば茶髪に変わりキューティクルができている。
カサカサだった肌も艶が出始め、水に触れれば弾きそうだ。水に触れられるのかは知らないが。
充血していた瞳も、薄汚かったワンピースも現れるたびに変わっていった。
好みじゃないなんて、とても言えないくらいに彼女は変わってしまったのだ。
「ねえ、好みになったかな?」
ほとんど別人になった時、そう聞かれてもう何も言えなかった。
正直見た目はめちゃくちゃ好みだったからだ。こんなにも生まれ変わるほど変わるのかと感心するくらい。
話せるようになってからは、言動も性格も嫌いじゃなかった。
夜に気を抜くと元の姿に戻ることを除いては。
正直幽霊の類はめちゃくちゃ怖い。怖すぎる。
だから夜は一緒には過ごせない。隣にいるなら夢の中でいい。
でも昼間の彼女は本気で可愛くて、眺めているだけで満足するほどドタイプだった。
だから、幽霊との恋人関係という歪な形が始まってしまったのだ。
「ねえ、大好きだよ」
そこにいなくても毎晩聞こえるガラガラな声。
いつか満たされた彼女が成仏する日を待ってはいるものの、最早一緒にいる理由が愛情なのか、恐怖なのかは俺にはもうわからない。
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