厄介なアドバイス

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初めて彼女に会ったのはバイトを終えた深夜、自転車で1人帰っているときだった。 車通りも人通りもなく、いつもと何も変わらず口笛を吹きながらただ気持ちよく自転車に乗っていただけだ。 等間隔で現れる街灯が流れていく星のようで、その景色を1人占めしながら漕いでいた。 たまたま視界の端に映った白い影。 初めは見間違いだと思った。いつもよりスピードが出ていたせいで街灯の残像でも見えたのだろうと解釈した。 とはいえ、一瞬怯んだ心臓を落ち着かせながら、そのままスピードを上げていると再びゆらりと視界に飛び込んできた白い影。 それはまるで髪の長い女の人が白いワンピースを着て1人立っているかのようだった。 気のせいだと、さらに跳ねた心臓を落ち着かせながら再びスピードを上げるとさらに200メートルほど漕いだころだろうか。 今度はもはや見間違えなんかではなかった。 さっき見たはずの白い服と長い髪。ぼうっとそれは青白く自立している。 ゆらりゆらりと心なしか道路に少しずつ出てきているようにも見えたそれは、さすがにもはや自分で制御できない心臓。 完全に見てしまった。 きっとそれは見えてはいけないモノ。 とにかく全速力で、ほとんどサドルに触れないまま立ち漕ぎ全開で漕ぎに漕いだ。 早くそれから逃れなければ、早く家にたどり着いてすぐに夢の中に飛び込まなければ。 どうにかたどり着いた家の鍵をガチャガチャと乱暴に開けて、近隣の迷惑も考えずに大きな音で扉を閉めた。 部屋の電気さえつけてしまえば、こちらのものだ。きっとああいうものは光の下には現れない。すぐにスイッチを入れて、部屋を見回す。 大丈夫そうだ。 とにかく気力を削がれ、背中から布団に倒れこむ。 忘れよう、忘れよう、忘れよう。 ひたすら脳に刷り込んでいると目の前にさっきの女が現れ、俺の意識は吹っ飛んだ。
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