厄介なアドバイス

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悪い夢を見たと、ねっとりとした気持ち悪い汗を拭いながら上半身を起こすと、ゆらりと黒い塊が視界の端に映る。 「ひっ……」 自分のキャパに収まりきらないほどの、想定外のことが起こると意外に声が出ないらしい。ゆらりゆらりと、徐々に昨日のそれが近づいてくるにもかかわらず、俺の体は鋼のように固く動いてくれない。 「あの……」 ただ黙っていると思いきや、そいつはまさか言葉を発してきた。 それに対して、体を含めて顔のパーツまでもが硬直してしまい、全くと言っていいほど何もできない。金縛りにでもあったような気分だ。いや、実際に合っているのかもしれない。できれば目を閉じたい……! 「あ、あなたのことが好きなんです……!」 ぼさぼさに絡みついて、長くなりすぎた髪の毛のせいでほとんど顔も見えないくせにその隙間から見える血走った目が、真剣に俺を見てそう言っていた。 どう見てもこの世のモノではないそいつは、瞬きもしないままにひたすら見てくる。 顔の筋肉もうまく動かせないまま、見たくもないのに静止した状態でそいつを見る以外なかった。どうにか口を動かせないかと顎に力を入れるも、力のない金魚のような動きしかできない。 「あ、あれ? 違うのかな? あ、あなたのことが好きなんです……!」 あ、いや、違うんだ。聞こえてないとかじゃないんだ。怖くて口が動かないだけなんだ……! 意味が通じていないと思ったのだろう、もう一度熱烈告白を受けた。 「え? え? え? 違うの? えっと……付き合ってください!!」 黙っている間に告白が進捗してしまった。 丁重にお断りをしないと、何が起こるかわからない。 いや、そもそもお断りして呪い殺されたりしないんだろうか。 ぎらぎらに黒い光を宿す瞳。生気のない色の爪と肌。 がりがりに痩せた体にボロボロで薄汚れたワンピースと髪の毛。 どうみても呪殺系だ。
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