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「ほら、そのワンピースの色違いあるじゃん。こっちの方がいいでしょ」
「え?」
彼女のまん丸い目を尻目に、色違いの赤いワンピースを手にしてレジへ向かった。店員さんに服を手渡すと、片耳のイヤホンを外して「プレゼント用で」と伝える。
ちらりと視線を飛ばした先にいる彼女は、遠目で俺の姿を信じられないという目で見ているだけだ。
「彼女さん用ですか?」
カサカサと包装紙の擦れる音がして、黙って彼女の方を見ていると店員さんが話しかけてきた。
「ん? あ、ああ、そうですね」
「可愛いワンピースですからね。きっと喜んでくださいますよ。彼女さん羨ましいなぁ」
「そうですか。それはどうも」
軽く頭を下げて、ワンピースと同じ色のリボンで可愛らしく包装されたプレゼントを受け取った。
「え? え?」
店を出ると早速彼女がまとわりついてくる。きっと会話は聞こえていただろう。期待を込めた瞳がキラキラと輝いている。
「つーか、爪。気になってたのそっちじゃなかったっけ?」
俺は彼女にその包み紙を渡さないまま、次の店へと促した。丁度隣は、化粧品を取り扱っているお店だ。ショーケースには色とりどりのアイシャドーや肌を美しく見せるパウダーで宝石箱のように見える。
彼女は視線を俺の手元に寄せながらも、促されるままショーケースに魅入った。
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