厄介なアドバイス

7/13

6人が本棚に入れています
本棚に追加
/13ページ
店を出ると、俺の周りをぐるぐると彼女が回る。 「え? え? え?」 自分のものだと分かっているけれど、言い出すこともできずにこうするしかないのだろう。黙っている限り、彼女は延々と回り続ける。ふわふわと茶髪が揺れるたびに甘い香りを乗せた。 「ネイルがあったら満足なんだよね。ちょっと休憩でもしよっか」 いい加減彼女の動きに酔いそうになったので、顎でさした先のベンチで休憩することにした。 「アイス好きだっけ。なにか好みの味とかある?」 「アイス? なんでも食べたい!」 「雑食かよ……」 彼女の趣向が雑食だということが発覚し、ベンチに彼女を待たせたままプレゼントをもってアイスのお店へ向かう。 その店は20種類以上のカラフルな見た目に、甘さと爽やかさの入り混じった香りが出迎えてくれた。 何も決められない彼女が、どの味が好きかわかるわけもなく適当にメロンソーダと抹茶のダブルコーンを注文する。緑に偏ったのは受け取ってから気づいたのだから仕方ない。 ベンチに戻ると、彼女の隣に見知らぬ男が座っていた。 まあ、気弱な彼女のことだ。何も言えずに座らせたに違いない。 「おまたせ」 緑で重なったアイスを片手に、彼女に声をかけると隣に座る男が俺を怪訝な目で見てきた。 断じてお前には言ってないんだが。 まずは上にのったメロンソーダにかぶりつき、彼女の方にそっとアイスの先を突き出す。 恐る恐る上目遣いで、食べてもいいのか戸惑いの眼差しを向けながら、その口をそっとつけた。
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加