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アイスがほとんど溶け切ると、彼女は嬉しそうな笑顔を浮かべる。
それからいくつか店を回ると、待ち合わせが午後からだったせいなのと、ここまでの移動に時間を使ってしまったせいで、もう空は夕方を告げていた。
「そろそろ帰る? 満足したんでしょ?」
「え? う、うん」
肯定の返事をしながらも、不満げな表情で見上げるのはなんの意図なのか。
「なに? まだ不満?」
「いや、そういうわけじゃ、ないんだけど……」
俯いてはっきりとしない彼女の態度と共に時間が止まる。そろそろ荷物の重みで腕が疲れてきた。
「あの、えっと……」
「なに?」
もじもじと、体をねじらせて要領を得ない。何か言いにくいことでもあるのだろうか。
「よ、夜を――」
「と、とりあえず帰ろうか!」
彼女が単語を出した瞬間、俺はとりあえず帰ることに決めた。電車の時間もあるのだ。早めに行動するに越したことはない。
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