世界一の恋愛

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 俺は高校教師を諸事情で辞めて転職をした。ちょうどユウちゃんと付き合いだした頃の話。教育系出版社に拾ってもらえたのは、教師時代の縁のおかげ。 「仕事中に携帯触るのどうかと思うなあ」  面倒な上司。いや、俺が悪いんだけど。それもこれも彼女からの返事が返ってこない日が3日続いて、落ち着かないから。 「すみません」  取引先とのWEB会議だってそうだ。発注を頂けるか、頂けないか、その瀬戸際の状況にもかかわらずだ。  会議では先週こちらから提案した教材についてそれなりの意見を言われるが、明らかに意識の半分は違う世界に向いていた。 「もしもし?聞こえますか?もしもーし」 「あ、はい、申し訳ございません」  狭い会議室で同席している他のメンバーは明らかにこいつどうした、と目線を向けた。  自分が一度に複数の物事を処理するのに向いていないことは分かっているが、たった数日の彼女の音信不通で調子が狂ってしまうのには不味さを感じた。
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