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「ねえ、慎太郎?起きてる?」
「起きてるけど、俺もう空っぽ。先っぽ空っぽ」
「はいはい、分かった分かった」
馬鹿みたいに彼女の体温や息遣いに昂った。俺の額から落ちた汗が彼女の胸を流れた瞬間も、彼女のきつく閉じた目蓋を舐めたくなった感情も、艶めいた彼女の脚の付け根も、全部死にたいほど愛おしかった。
「不思議。今日までもずっと慎太郎とちゃんと繋がってると思ってたんだけど、今ほど存在を確認できて嬉しかったことない」
さっき2人で飲んだ安いウイスキーが今更頭に回ってきている。
「酔ってんの?」
「うん、お酒にもあなたにも」
「ちょっと、そこ触んないで、まだ駄目だって」
ちょっといいホテルは時計の音もしない。とはいえ、すぐそこまで朝が来ているのは頭で分かっていた。
俺の手を取り、自分の目元を敢えて拭うところがわざとらしくて、いじらしい。
濡れた自分の指を妙に冷静な心持ちで自分の胸に塗った。
「じゃあ、おやすみ、慎太郎」
「…おやすみ。またすぐ、おはようしような」
そうして眠りに就いた先でも、俺は彼女を出迎えていて、また再会を喜んでいる。
「私、今、世界一幸せ」
「じゃあ俺も」
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