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わたしの仕事は毎朝7時、
静かに部屋のカーテンを開け、
日差しを迎えることに始まる。
——おはようございます。お父さま。
わたしの声に反応し、
ベッドに寝たきりのお父さまは、
ゆっくりと目を開いてこう言う。
「……おはよう、マリア。いい朝だね」
家具のほとんどない室内に、
据えられた介護用ベッド。
痩せた体とまばらな髪は、
淡い日差しの中に透けるほど細く、薄く、老いてはいるが——
その瞳には科学者らしい、理知的な光が宿っている。
(愛おしい、お父さま……)
わたしは介護用アンドロイド。
あなたはわたしの開発者。
たとえ生物学的な意味で「親子」と呼べぬ間柄でも、
自分をこの世に生み出してくれた相手を「お父さま」と呼ぶことに、そう間違いはないはずだ。
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