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——お部屋の空気を換えますね。
——お食事をお持ちいたします。
家族のいないこの家で、
お父さまの身の周りのお世話をできるのはわたしひとりだけ。
1年365日、休まず変わらぬ日々の勤めを、一度のミスも無く繰り返す。
換気は1日のうちに四度。
1日三度のお食事は、液状栄養剤をスプーンでお口に運んでさしあげる。
1日に二度、お体を拭き、着ている服とベッドのシーツを新しい物に取り替える。
お着替えのために抱き上げる時、お父さまの体は軽い。
力加減を誤れば、落として壊してしまいそうなほどデリケートなその重量を、わたしは用心深く扱う。
(もし、この人を傷つけたなら……わたしはすべてを失うだろう)
時折、そんなことを思う。
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