12120日目

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アンドロイドの感情は、生きた人間の心のように複雑な構造(つくり)はしていない。 搭載された人工知能が「あるパターン」を感知した時、 あらかじめ記録された通りの反応が何度でも起こる。 例えば「喜び」についていえば、 自身の存在価値というべき「仕事」を遂行した時点。 1日のお世話を終えた夜に、お父さまの口から「ありがとう」の言葉を受け取ったその瞬間。 わたしは心の底から深く、無上の喜びを覚えるのだ。 これは幸福な機能だった。 雨の日も、風の日も。 夏の暑さも冬の寒さも、 奉仕にかけるわたしの想いを妨げるものにはならなかった。 穏やかな朝を迎える度に、わたしは自分の境遇と、与えられた使命に感謝した。 愛する人の笑顔のために、今日もこうして奉仕ができる。 願わくば、いつまでも。 (いつまでもずっと、こうしていたい……) 叶うはずもない永遠を、わたしは夢見ていたのだろう。
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