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アンドロイドの感情は、生きた人間の心のように複雑な構造はしていない。
搭載された人工知能が「あるパターン」を感知した時、
あらかじめ記録された通りの反応が何度でも起こる。
例えば「喜び」についていえば、
自身の存在価値というべき「仕事」を遂行した時点。
1日のお世話を終えた夜に、お父さまの口から「ありがとう」の言葉を受け取ったその瞬間。
わたしは心の底から深く、無上の喜びを覚えるのだ。
これは幸福な機能だった。
雨の日も、風の日も。
夏の暑さも冬の寒さも、
奉仕にかけるわたしの想いを妨げるものにはならなかった。
穏やかな朝を迎える度に、わたしは自分の境遇と、与えられた使命に感謝した。
愛する人の笑顔のために、今日もこうして奉仕ができる。
願わくば、いつまでも。
(いつまでもずっと、こうしていたい……)
叶うはずもない永遠を、わたしは夢見ていたのだろう。
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