12120日目

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(取るべき行動はわかっている……) (あせ)らず体を抱き起こし、 「再起動」の手順を辿(たど)る。 バッテリースペースは背面の、制御パネルの隣にあった。 交換の際はやむを得ず、お父さまを一度床に下ろし、 うつぶせにしなければならないが、 毛布の下に隠れた箇所には人工皮膚の装着がない。 排泄用のビニールチューブをちぎらないよう、気を配る。 ベッドの下から取り出してきた、予備バッテリーをセットして、 タイマーを現時刻に合わせて、祈るように再起動をかける。 (うまくいけ……うまくいけ……) いつものお目覚めの時刻から、遅れること約半時間。 再起動の済んだお父さまは、 いつもの通り目を開き、 いつもの通り、微笑(ほほえ)んだ。 「おはよう、マリア。いい朝だね」 (……だいじょうぶ、元通り) どこも壊れてなんていない。 安堵が全身を駆け巡った。 たとえ偽物(ニセモノ)》だったとしても、 お父さまがお父さまの姿で、再び笑いかけてくれるなら。 わたしの単純な思考回路は何度でも「喜び」を味わえる。 そういうふうに、できているのだ。
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