10人が本棚に入れています
本棚に追加
(取るべき行動はわかっている……)
焦らず体を抱き起こし、
「再起動」の手順を辿る。
バッテリースペースは背面の、制御パネルの隣にあった。
交換の際はやむを得ず、お父さまを一度床に下ろし、
うつぶせにしなければならないが、
毛布の下に隠れた箇所には人工皮膚の装着がない。
排泄用のビニールチューブをちぎらないよう、気を配る。
ベッドの下から取り出してきた、予備バッテリーをセットして、
タイマーを現時刻に合わせて、祈るように再起動をかける。
(うまくいけ……うまくいけ……)
いつものお目覚めの時刻から、遅れること約半時間。
再起動の済んだお父さまは、
いつもの通り目を開き、
いつもの通り、微笑んだ。
「おはよう、マリア。いい朝だね」
(……だいじょうぶ、元通り)
どこも壊れてなんていない。
安堵が全身を駆け巡った。
たとえ偽物》だったとしても、
お父さまがお父さまの姿で、再び笑いかけてくれるなら。
わたしの単純な思考回路は何度でも「喜び」を味わえる。
そういうふうに、できているのだ。
最初のコメントを投稿しよう!