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「お部屋の空気を換えますね。お食事もお持ちいたします……」
再び回り出した日常を、
わたしの仕事が埋めていく。
どこまでいってもふたりきり、
変わることのない暮らしの中で、
最近になってひとつだけ。
わたしの中に「気づき」が生じた。
……生きていた頃のお父さまが、
なぜご自身の姿に似せた、
「アンドロイド」をわたしのために、
わざわざ作り、遺されたのか。
(今ならわかるような気がする……)
そしてその意味を考える度、
喩えようもない感謝の念が、
わたしの冷たい胸の内から、
沸々こみ上げてくるのだった。
——マリア、マリア。わたしのマリア。
——いつまでもそばで笑っておくれ……。
(愛おしい、お父さま……)
わたし、マリアはあなたの娘。
あなたの幸せなアンドロイド。
……予備バッテリーはベッドの下に、まだ8台も残されていた。
1台当たり25年。
単純計算、誤作動なしで、
あと200年も時間はある。
(このバッテリーが尽きる日まで、一生、あなたにお仕えします……)
お父さまが亡くなられた日から、
今日で12120日目……。
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