12120日目

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「お部屋の空気を()えますね。お食事もお持ちいたします……」 再び回り出した日常を、 わたしの仕事が埋めていく。 どこまでいってもふたりきり、 変わることのない暮らしの中で、 最近になってひとつだけ。 わたしの中に「気づき」が生じた。 ……生きていた頃のお父さまが、 ご自身の姿に似せた、 「アンドロイド」をわたしのために、 わざわざ作り、(のこ)されたのか。 (今ならわかるような気がする……) そしてその意味を考える度、 (たと)えようもない感謝の念が、 わたしの冷たい胸の内から、 沸々(ふつふつ)こみ上げてくるのだった。 ——マリア、マリア。わたしのマリア。 ——いつまでもそばで笑っておくれ……。 ((いと)おしい、お父さま……) わたし、マリアはあなたの娘。 あなたの幸せなアンドロイド。 ……予備バッテリーはベッドの下に、まだ8台も残されていた。 1台当たり25年。 単純計算、誤作動なしで、 あと200年も時間はある。 (このバッテリーが尽きる日まで、一生、あなたにお仕えします……) お父さまが亡くなられた日から、 今日で12120日目……。
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