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真耶は小田川に架かる橋の中央に立った。
夏の陽は、ずいぶん前に西の山に沈んだ。振り返り欄干に体を預けると、背中を押すように涼しい風が吹いてくる。
夜空を見上げると高いところに白鳥座の星々が瞬いていた。今落ちて行く仄かな流星は、昨日までの私なのかもしれないと真耶は思った。
左手に握りしめている厚手のノート。そこには、二十歳になるまでに真耶が乗り越えてきた様々な災難について書かれている。
『厄除け日記帳』
真耶はその日の夜、自分をずっと守ってくれた唯一の命綱を、手放すことにした。
「運命なんかない。自分が進む道は自分で選ぶんだよ」
白澄がそう言ってくれたから。
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