第4章 現実は小説より奇なり

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第4章 現実は小説より奇なり

翌朝、母さんは二日酔いで寝込んでいた。 起き上がれないようで、珍しく会社も休むみたいだったので、俺は母さんの寝室のサイドテーブルにレモン水を置いてから 「シジミのお味噌汁、インスタントだけど置いてあるからね」 と、声を掛けてから学校へ向かった。 エレベーターで降りると、既に章三がマンションの前で待っている。 蒼ちゃんは痴漢やストーカー被害に遭ったりしているので、秋月先輩の送迎車に同乗して通学している。俺と章三は徒歩15分の場所にある最寄り駅から電車通学している。 満員電車は辛いけど、俺は章三のお陰なのか痴漢とかの被害に遭った事は1度も無い。 桐楠大附は名家のお嬢様やお坊ちゃまが多いので、通学はほとんどの生徒が車で通学している。 その為、車専用の出入口がある。 この学校は広い敷地なので出来る贅沢。 俺が学校の最寄り駅から歩いて校門に入ると 「おはよう」 と、背後から声を掛けられる。 振り向くと、秋月先輩が笑顔で近付いて来た。 先輩は隣に並ぶと 「京子さん、具合は大丈夫?」 そう言って心配そうな顔をしている。 「あはははは…。昨日、かなり飲んでましたからね。二日酔いなので、大丈夫ですよ」 俺が苦笑いして答えていると、蒼ちゃんが物凄い勢いで走り込んできた。 「あおちゃん、ちょっと良いかな?」 蒼ちゃんは目を座らせて俺の肩を掴むと 「なんで翔と田中さんが、僕の黒歴史を知ってるの?」 と、聞いてきた。 俺が思わず秋月先輩を見ると、先輩は手のひらを左右に振って「俺じゃない」って口をパクパク動かしてる。 すると蒼ちゃんは俺の両頬を両手で挟んで自分の方へ向けて 「あおちゃん、僕の質問に答えて!」 と、怒った顔で聞いて来た。 「あはははは…。昨日、俺がトイレに行ってる間に、母さんが携帯に保存してる画像を2人に見せてたんだよね…」 苦笑いする俺に、蒼ちゃんが 「なんで止めてくれなかったの?」 って言いながら、俺の肩を揺する。 その時、蒼ちゃんから田中さんのコロンの香りがフワリと香る。 俺が思わず 「蒼ちゃん…?何で蒼ちゃんから、田中さんのコロンの香りがするの?」 と聞くと、蒼ちゃんがピキっと固まった。 「田中さんが運転する車で通学してるからだよ」 視線を逸らして呟く蒼ちゃんに、俺は先輩に近付いてクンクンと匂いを嗅ぐ。 でも、先輩からは田中さんのコロンの香りは全くしない。 「え?でも、先輩からはしないよ」 不思議に思って蒼ちゃんを見ると、蒼ちゃんは真っ赤な顔をして 「あ!僕、今日は日直だったんだ!」 そう叫んで走り去ってしまった。 「????」 俺が首を傾げて不思議がっていると、章三は呆れた顔をして俺の頭を軽く小突く。 「お前の天然は最強だな…」 そう言われて、益々分からない。 すると、秋月先輩が俺を見てクスクスと笑っている。俺は先輩に接近し過ぎていたのに気付き 「あ、すみません」 そう言って慌てて離れた。 先輩は笑顔のまま 「本当に、神崎君は子犬みたいだよね」 って言われてしまう。 「あ!それ分かる!」 秋月先輩の言葉に章三が同意したので、俺がプクっと頬を膨らませると先輩は笑いながら頭を撫でた。 「褒めてるんだよ」 そう言うと、笑いながら秋月先輩は時計を見て 「そろそろ行かないと、蒼介がご機嫌斜めになっちゃうな」 って言って行ってしまった。 去って行く先輩の後ろ姿を見送っていると、章三が 「さっきの兄貴の話だけど…、なんで京子さんが兄貴の画像を2人に見せるような状況になってるの?」 そう言いながら俺に詰め寄って来た。 ヤバい…。 俺、まだ母さんの再婚話をしていなかった事を思い出して苦笑いした。
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