第4章 現実は小説より奇なり

2/2
前へ
/47ページ
次へ
「京子さんが再婚!」 昼休みになり、俺は章三と屋上でお昼を食べながら事の成り行きを説明した。 まぁ…そうだよね。 実の息子の俺がびっくりしたんだから、章三が驚くのも無理は無い。 「だって…、京子さん。お前の親父が大好きだったじゃないか?」 「俺だって驚いたよ」 章三に溜息を吐きながら答えると 「しかも…再婚相手が翔さんの親父さんって…」 章三は唖然としていた。 「それは俺も驚いた」 昨日は食事会だったので、俺は今日のお弁当を作る時間が無くて、学食のパンをかじりながら思い出す。 「じゃあ、翔さんが住んでいる家へ引っ越しするのか?」 ぽつりと章三に言われて、俺はハっとした。 「そっか…。母さんが再婚したら、引っ越ししなくちゃいけないのか!」 当たり前の事に驚いている俺に、章三が呆れた顔をする。 慣れ親しんだ町を離れるのは…寂しくないと言ったら嘘になる。 何かあれば、すぐに蒼ちゃんや章三が居る赤地家がある生活では無くなるのか…。 俺がそう考えていると、突然、章三が真剣な顔で俺を見つめて 「行くなよ…」 と、呟いた。 「え?」 章三の言葉に瞬きをすると 「翔さんの所になんか…行くなよ! ずっと、俺と一緒に居てくれよ!」 と、章三に腕を掴まれて言われてしまった。 いつも見てる章三とは違う顔に戸惑っていると 「俺、ずっと葵が好きだった。お前が変わらず傍に居てくれると思ってたから、言わないで黙ってたんだ」 と、思わぬ言葉を言われてしまう。 俺は一瞬、告白?って思ったが、まさかずっと一緒に居た章三が俺にそういう感情を持つとは信じられず、 「俺だって、章三が大好きだよ。小さい頃から、ずっと一緒だったし…。突然真顔で言うから、勘違いしそうになったじゃないか…」 と、照れながら答えた。 すると章三は俺を引き寄せて抱き締めると 「そうじゃない!俺はお前をずっと好きだった。だから、他の女に邪魔されないように目立たないようにしたし、お前の隣を例え翔さんにだって歩かせたくなくて部活も辞めた。この学校に来たのだって、お前が居るからなんだよ!」 そう叫ばれた。 俺は衝撃の事実に動けなくなる。 俺が呆然としていると、章三に抱き寄せられてキスをされそうになってしまう。 俺は思わず章三を突き飛ばし 「ごめん…、俺…」 と呟くと、その場から走って逃げ出していた。 (いつから?…章三が俺を好きって…) バクバクとうるさく心臓が鳴り響く。 章三は中学時代、サッカー部で人気があった。 髪型もスポーツ刈りだったし、蒼ちゃんとは正反対のタイプではあったけど、めちゃくちゃモテていて彼女が居た時もあった。 そんな章三が、中三でサッカー部を引退してから髪の毛を伸ばし始め、高校入学と同時に伊達眼鏡にして前髪で目元を隠すようになる。 なので、今の学校では暗くて地味なガリ勉イメージが着いてしまい、何故か風紀委員をやらされているほどだ。 1度理由を聞いたら 「女がうるさい」 という理由で、敢えてモテない君を演じているようだった。 俺はその時、「モテるやつは贅沢だね~」なんてからかっていたんだけど…。 ずっと仲の良い幼馴染みだと思っていたから、章三の真意を知って俺は困惑してしまう。 母さんの再婚、その相手が秋月先輩のお父さんっていうだけでも頭を抱えてるのに、章三の気持ちを知ってどうしたら良いのか分からなくなってしまう。 この後、午後の授業や帰りをどうしたら良いのかと、俺は昼休みの終わりを告げる5分前の予鈴を聞きながら教室へと歩いていた。
/47ページ

最初のコメントを投稿しよう!

376人が本棚に入れています
本棚に追加