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やがて見覚えのある高級車へと突き進む。
蒼ちゃんが運転席のドアの前に立つと、ドアが開いて中から田中さんが出て来た。
「蒼介さん?葵様まで?」
田中さんは不思議そうな顔で俺達を見ている。
「田中さん。あおちゃんに本当の事を伝えようと思うのですが、良いですか?」
真剣な蒼ちゃんの顔を見て、田中さんは柔らかく微笑むと
「いつも言っていますが、私は構いませんよ」
と、頷いた。
俺が益々事態が飲み込めずに首を傾げていると
「あおちゃん。僕の好きな人は、田中さんなんだ」
と、蒼ちゃんがいきなり言い出した。
俺が驚いて2人を交互に見ていると
「蒼介さん、その言い方はいけませんよ。私はあなたの恋人なんですから…」
そう言って、蒼ちゃんを優しく見つめた。
(はぁ?今、何と?)
俺があんぐりとしていると
「実は…翔の家に泊まっているというのは嘘なんだ。僕は毎週土曜日、翔の家に泊まるフリをして、田中さんの家に泊まってたんだ」
見つめ合う2人の雰囲気は、確かに恋人同士だけど…。
「田中さんは仕事が忙しいから、デート出来る回数も限られてて…。だから時々、翔にお願いして時間を貰って車内デートしてるんだ。でも、その度にあおちゃんから田中さんのコロンの事を指摘されて冷や冷やしてたんだよ」
苦笑いする蒼ちゃんに、段々と状況を理解し始めた。って事は…、俺がモヤモヤしていた事は全て…田中さんが犯人!
「えぇ~~~!!」
驚いて叫んだ俺に
「本当はもっと早く伝えれば良かったんだけど…、タイミングが分からなくて…」
と、蒼ちゃんが頬を赤く染めて呟いた。
「いっ…いつから?」
思わず聞いてしまうと
「付き合い始めたのは、去年の今頃?」
っと、蒼ちゃんは田中さんに確認している。
「ゲリラ豪雨の日がきっかけですから、ちょうど1年前ですね」
田中さんは落ち着いた口調で答えた。
俺は田中さんと蒼ちゃんの顔を何度も交互に見て、大きな溜息を吐いた。
「そっか…。なんだ…、そうなんだ。」
ホッとした気持ちと、今までモヤモヤした気持ちが無駄だったと知ってちょっと自分に苦笑いした。その時、ふと母さんの言葉を思い出す。
『 蒼ちゃんだったら、あおちゃんがその事に悩んでいるのを知らないでいた事を苦しむんじゃないかしら?』
母さん、本当だね。
もっと早くに伝えれば良かったんだね。
俺は心の中で呟き、小さく微笑んだ。
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