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車内は重い空気のまま自宅マンション前に到着。
蒼ちゃんと車から降りると、秋月先輩達を乗せた車が走り去るのを2人で見送った。
車が見えなくなると
「あおちゃん、ごめんね。気を遣っちゃうのが分かってたのに…我慢出来なかった」
ポツリと蒼ちゃんが呟く。
「え!いやいや。俺の方こそ、ごめんなさい。」
「え?」
俺の言葉に、蒼ちゃんが驚いた顔をして俺の顔を見た。
「元はと言えば、俺が田中さんの顔をガン見していたからだし…」
落ち込んで言うと、「あぁ…」と呟いて
「まぁ、田中さんが目を引くのは仕方無いからね。後半は、完全に田中さんが遊んでたし」
と言って俺に苦笑いを浮かべる。
「田中さんはさ、なんだかんだ言って翔が可愛いんだよね。」
ぽつりと言うと
「田中さんはね、翔のお父さんの秘書である前に、翔とは兄弟のように過ごして来たんだって。いつだったか、翔のオムツを取り替えたって話しもしてて…。とても大事な存在なんだと思う。」
と呟いてから、蒼ちゃんはゆっくりと俺を見た。
「でも、恋人は僕だから」
意思のこもった、強い瞳で言い切った蒼ちゃんは凛として綺麗だった。
その後、「ふふっ」と小さく笑い
「まぁ、気にしなくて良いからね。翔、あぁ見えて翌日はケロっとしてるから…」
お互いを分かってるから言える、秋月先輩を信頼した蒼ちゃんの言葉に俺も頷く。
「…だから」
「え?」
小さな蒼ちゃんの声に聞き返すと
「章三とも、明日は普通にしてあげてね」
と呟いた。
(あ!色々あり過ぎてすっかり忘れてた)
章三に申し訳無い気持ちになり、俺は頷いた。
「蒼ちゃん、いつもありがとう」
俺の言葉に蒼ちゃんはふわりと微笑むと
「僕は2人の兄貴だからね」
そう言って俺の背中を軽くポンポンっと叩いた。
昔なら「兄貴」って言葉を言われると辛かったけど、今は温かく聞こえるのが不思議だ。
俺は蒼ちゃんと笑顔で分かれ、自宅のマンションへと入った。
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